02号 すべては聴くことから始まる
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トマティスメソッドの根幹は「聴くことのできるもののみ再生できる」という言葉に集約されます。
02号では自分の身体の声を聴くことの大切さとその
方法、聴き方によってコミュニケーションがどのように変わっていくかを学びます。

目次

はじめに
すべては聴くことから始まる(日原 美智子)

聴くことのできるもののみ再生できる/身体を振動させ心拍を感じることで自らを知る/心拍を伴うというのはすべてにおいて自然であるということ/身体を感じ、姿勢をチェックする/振動で心拍を感じる/心拍とは自分の基本のリズム/身体に余計な負荷をかけているから疲れる/ちゃんと聴くと取捨選択でき、整理整頓される/ちゃんと聴くと正しい引き出しに行き当たり、言葉が自然に出てくる/自分の話を自分で聴きながら話す/アイデンティティを外に置く/言葉が出ないというのは、言葉が出る姿勢になっていない/身体の声を聴く

もっと耳と身体を信じてみよう(森田 理恵)
合唱グループでの会議の体験から(村上 亜紀子)
自分の声(響き)を聴くということ(木村 満壽美)
音訳の体験から(松本 悦子)
子育ても聴くことから始まる(宗形 憲樹)
トマティスと出会って変わったこと(渡辺 重雄)
01号の感想
この小冊子について
編集後記

はじめに

『耳と聲』第2号のテーマは、「すべては聴くことから始まる」です。トマティスメソッドの根幹はこの言葉に集約されているといっても過言ではありません。
では、このメソッドはどのようにして生まれたのでしょうか。トマティス博士は、ある時期、軍需工場で騒音の中で働いている労働者たちの職業性難聴の研究をしていました。また一方、父親がオペラ歌手であったので、発声にトラブルを抱えてしまった、当時著名の歌手たちの声の治療にも多くあたっていました。そしてある時、この歌手たちの声の機能低下と似た症状が、聴力を落とした労働者たちにも起こっていることに気づきました。つまり、聞こえと声が関係している、ということです。そして、その後の臨床経験から後に「トマティスの三法則」と名付けられる法則を発見し、研究が重ねられて、耳と声のトレーニング「トマティスメソッド」が誕生しました。この三法則は次のようなものです。
1.人間の声には、聴き取れる音のみ含まれる。
2.聴き取りが改善すると直ちに、発声も改善する。
3.聴覚の改善は一定期間の訓練により定着する。
まずは受け入れることが先であり、私たちは、内在化されたもの以外を表出することはできない、ということです。逆に言えば、受信が豊かになれば、発信も豊かになるということです。これは、聴き取りと発声のことだけでなく、すべてのことにも通じるように思われます。
では、なぜ聴き取りが変わると発声が変わるのでしょうか。例えば今ここで、「耳を澄ましている人の姿を想像してください」というと、その想像される姿にあまり大きな違いはないように思います。首をどちらかに極度に傾けていたり、あごを上に突き出したりはしていないはずです。おそらく、そこから静けさを感じとれるような、仏様を彷彿とさせるような姿ではないでしょうか。その時、耳は正しい位置に置かれ、耳自身の機能を十分に発揮している状態にあるといえます。
耳、つまり頭の位置が正しければ、そこから下に伸びる背骨も本来あるべき自然なラインになり、良い姿勢になります。この状態の時、私たちの身体は良いアンテナになり、情報量も豊かになります(もちろん取捨選択は必要です)。
またこの姿勢をとると、呼吸が深くなり、身体もリラックスするので、声帯の振動が背骨に無理なく伝わり、響きの伴った良い声になるのです。
つまり、聴くという意思が受信体となるべく良い姿勢を導き、良い姿勢が楽な発声を導くので「聴き取りが変われば、発声が変わる」となるのです。その声をよく聴きながら話すことで、このサイクルは常に回っていきます。声を良くしたい、声を楽に出せるようになりたいetc. と思った時、声の出し方にフォーカスしがちですが、実は、まずは、声を「聴く」ことに意識を向けた方が、結果的に身体にも心にも優しい発声ができるようになるのです。
「聴く」ということは、積極的に「受け入れる」ということです。そして本当の「受け入れ」は、様々なフィルターをはずして、謙虚に心静かでなければできないことです。「聴く」ということはそういうことなのだと思います。「耳を澄ます」という言葉は、それを絶妙に言い表しています。身体の力を抜き、透き通った状態で、聴いてみる。この世に生まれた時、私たちは、きっとこの状態だったはず…。ここからすべてが始まるのです。
※トマティス博士の父親は、「気品あるバス歌手」として国際的な名声を獲得し、活躍されていました。

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