トマティスメソッドとは、自然体で生きるためのメソッドです。
01号では、トマティスメソッド発声コース(CAV)認定トレーナーの日原美智子氏が、トマティスメソッドを学び身につけることによって、自然体で日々をハッピーに過ごせるようになっていく過程が語られています。
目次
はじめに
人間は探し求める耳である(森田 理恵)
誰もが歌えるようになる(村上 亜紀子)
思いがけない再会/教え方は千差万別/誰もが歌えるようになるメソッドがある
イタリアと日本でのトマティスとの出会い(木村 満壽美)
イタリアで出会う/声が変わった驚き/日本での出会い
自然体で生きるためのメソッド(日原 美智子)
博士が最初にしたのは私をリセットすること/毎日の積み重ねによってのみ頭と心と体がひとつになり、自然と身体が動くようになる/日本の伝統文化で私のアイデンティティを確認した/ありのままの自分を大切にすることが、自然体で生きる第一歩/あふれる愛でした行為は代償を求めない/トマティスメソッドは人間本来の力を引き出しているだけ/自然体とは自分の身体の状態を意識し、制御できるようになること/トマティス博士の言葉を忠実に伝えていく
私が耳と聲の本をまとめようと思ったわけ(宗形 憲樹)
トマティスメソッドとの出会い/トマティスメソッドと出会って変わったこと/日原先生の経験を本にしたい
編集後記
はじめに
「人間とは、自分に絶えず呼びかける天地万物の受信アンテナである」と述べたフランスの耳鼻咽喉科医がいます。その名はアルフレッド・トマティス博士(1920〜2001)。早産の仮死状態で生まれ、いったんはかごに捨てられてしまったのを、その後拾い上げられて蘇生したという誕生秘話を持ちます。「この死に瀕した誕生体験が自分の仕事の方向性を決定づけた」と自伝で述べているように、彼は単に耳鼻科医にとどまらず、耳と声と心の探求に一生を捧げました。
耳は胎生期に早くに完成し、そして死に際しては一番最後にその機能を閉じると言われています。これに象徴されるように、耳は音を受信するだけでなく、身体のバランスを司どったり、脳へエネルギーを送るダイナモの機能も持ち、一般に知られている以上に人間の営みを下支えしている大事な器官です。
トマティス博士は、この「耳」そして「聴く」ことの大切さを説き、ついには、耳の再教育トレーニングと、「聴くこと」を主体とした発声トレーニングを開発しました。つまりは「受信」と「発信」のトレーニングです。これがトマティスメソッドです。
このメソッドに関わるうちに、これは、「聴いて、感じて、響き合うというコミュニケーションの原点」を、私たちに思い出させるメソッドであると、より深く感じるようになりました。
私たちのコミュニケーションは、いまやメールが主流になりました。便利ではあるけれど、その一方で人と相対することが苦手な社会になりつつあります。相対したときに、目が語るもの、声が語るもの、表情が語るもの・・・。赤ちゃんとお母さんがお互い全身で相手を知ろうとする、聴こうとする、あの感覚を私たちはもう一度、取り戻す時期にあるような気がしてなりません。
私たちは、昨今、身体を置き去りにしてきているようにも思います。
博士の言葉に、「頭と心と体を一致させる」というのがあります。私たちは、とかく思考が先行し頭でっかちになりがちです。もしくは、心でっかち、体でっかちな人もいるかもしれません。これらが、どれも均等に使われると、無駄な動きがなくなり、結果自分に対して優しい生き方になります。それは同時に無理することなく、自分の能力を最大限に引き出すことにもつながります。 博士はそれを、聴く(受信)、声を出す(発信)という日常あたりまえに行っている行為を見直すことで、見事に誘導するメソッドを作りました。
「自分の耳を正しく使って、自分の声を聴くこと」が、自分に優しい生き方にもつながるなんて本当?と思われるかもしれません。でも、少しだけ自分に対しての意識を変えれば、誰にでもできることなのです。
このユニークな視点を少しでもご紹介できたらと、この冊子の発行を思い立ちました。
トマティス博士より直接指導を受け、トマティス発声コース(CAV)の認定トレーナーとして、日本において多くの指導を行っている日原美智子氏へのインタービューを中心にお届けしてまいります。
*この小冊子を制作している「耳と聲の本プロジェクトチーム」のメンバーは、「トマティスメソッド」を提供しているスタッフとその志に共感する仲間たちです。